鎌田實の一日一冊(345)
「濃霧の中の方向感覚」(鷲田清一著、晶文社)
危機の時代、先の見えない時代において、本当に必要とされ、本当に信じられる知性、教養とは何か。
鷲田さんの臨床哲学がやわらかく、わかりやすく、思索のきっかけをつくってくれる。
「忘れない」というのは知性だというのは、いい言葉だなと思った。
自由についての思索では、「リバティ」という言葉をひも解く。
束縛を解くという意味の「リバティ」は自分にかかってくる強制や拘束からの解放を意味している。
他人の自由を認めることは、自分の自由を制限できることを含む。
「リバティ」を英語の辞書で引くと、たいていの場合「気前の良さ」が第一の意味として出てくる。
この「気前の良さ」は、自分の自由より、まず他者の自由を擁護するということである。
とすれば、そういう相互扶助の精神が充満しているところにしか、おそらく本当の自由はない、と鷲田さんは書いている。
これは大事なところだ。
自分がかかわるコミュニティーや組織では、こういう「気前の良さ」を持ち続けたいと思った。
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