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2019年6月 1日 (土)

鎌田實の一日一冊(350)

「超越と実存 「無常」をめぐる仏教史」(南直哉著、新潮社)

著者は、恐山の禅僧である。
「私は無常」と説く仏教の歴史を読み解きながら、私とは何か、死とは何か、仏教とは何かを探求する。
「ある時点で、成仏した、悟ったとわかった瞬間、それが認識である以上は概念化するわけで、結局は超越理念として扱われる」
これは無常の立場からすると決して許容しない事態である。
仏教は、インドで生まれ、中国から日本へと伝わる過程で、超越的理念と結びつき、大きく変化していった。
著者は、「実存」という生きる意味にこだわりながら、絶対的な存在としての超越的理念に抗う。

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後半では、空海や最澄、道元の思想を分析しながら、無常や無我を考えていく。
小林秀雄賞受賞の良書。
自分にとっての「超越」と「実存」を考えさせてくれるのが、この本のおもしろいところだ。

 

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