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2019年7月 7日 (日)

鎌田實の一日一冊(361)

「共感の時代へ」(フランス・ドゥ・ヴァール著、柴田裕之翻訳、紀伊國屋書店)

著者は動物行動学者。
この本は、軽快な文章で書かれていてとても読みやすい。
共感は人間だけでなく、進化史上哺乳類に共通する特性であるという。
たとえば、母サルが死ぬと、ほかのメスが幼い子ザルの面倒をみることが多い。
大人のオスでさえ、血縁のない孤児を抱いて守り、食べ物を与える。
アルゼンチンでは、メス犬が捨てられた人間の子どもを、自分の子犬と一緒に世話して、命を救った。
オオカミに育てられた人間の子どももいる。
ベンガルトラのメスが、豚の子どもを育てたという話もある。
どの動物も、そして人間も、食べ物や生殖の相手、縄張りをめぐって同じ種の仲間と衝突するが、共感することもできる。

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共感があれば世の中がやさしく、平和になるかというとそうではない。
誤った方向に共感すると、戦争に進んでいくことだってある。
共感の時代へ向かっているからこそ、共感の裏側を知っておく必要があるという点で、
とても刺激的な本である。

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