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2019年7月 6日 (土)

鎌田實の一日一冊(360)

「モンテレッジォ小さな村の旅する本屋の物語」(内田洋子著、方丈社)

久しぶりにウキウキする本に出合った。
本を愛する人たちのたくましい歴史が、この本には詰まっている。
北イタリアの山奥に、人口800人ほどのモンテレッジォという村がある。
この村の一割が本の行商で生計を立て、村のほとんどが本にかかわる仕事をしている。
この村には200年前、活版印刷の会社があった。
権力者が発禁本にした本をそっと隠し持って、行商の形でほしい人のもとに届けた。
行商をしながら、気に入った町で本屋を開いたため、本屋さんにはモンテレッジォの出身者が多い。
露天商賞という、今でいうところの本屋大賞も1950年代に作った。
第一回の受賞がへミングウェイの「老人と海」。
賞金がすごい。
2000部を買い取り、1000部は生活困窮者の支援所や、病院、刑務所に寄贈。
残りの1000部は全国の露天商に配本し、売り広める。
これをきっかけに何十万部も売り上げた受賞作品もあったという。

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ぼくが杉並区の和田に住んでいるとき、ジャン荘を奥さんに任せ、
オートバイで貸本をしていたおやじさんがいた。
売れ筋の月刊誌などは、3日間のレンタルで、次の人にまわしていく。
新刊も、この人なら買うかもしれないというあたりをつけて、持ち歩いて売ったりしていた。
おもしろい商売があるなと思っていた。
それにしても、16世紀ごろから山を越えて、命がけで本を届ける人たちがいたというのは驚いた。
きれいな写真も、想像力を膨らませてくれる。

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