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2019年9月11日 (水)

鎌田實の一日一冊(366)

「資本主義と闘った男 宇沢弘文と経済学の世界」(佐々木実著、講談社)

日本人でノーベル経済学賞に最も近い男といわれた宇沢弘文の評伝。
著者は、宇沢の師匠やノーベル経済学賞を受賞した弟子らを訪ねてインタビュ―し、
宇沢という人間を浮かび上がらせていく。
30代でシカゴ大学の教授をし、2人の弟子を育てた。
その2人は後にノーベル経済学賞をとっている。
しかし、40歳でシカゴ大を辞めて、日本に戻ってくる。
このとき、日本に戻ってこなかったら、ノーベル経済学賞をとったのではないか。
これ以降、宇沢は新しい感覚の論文を出さなくなった。
沈黙に入るのである。
その間、何を考え、何をしていたのか。
後に彼は、人々の幸せに役立つ経済学を考え続けた。
それが、晩年の「社会的共通資本」という概念につながっていく。

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ぼくは、宇沢が主催するシンポジウムに呼ばれたことがある。
「社会的共通資本としての医療」という本に原稿も書いた。
情熱的なメンターの風貌をしていた。
体が大きいだけではなく、大きな気を発していた。

600ページを超えるこの本は厚いけれど、読み応えがある。
この50年間の経済の潮流がわかり、その潮流に抵抗し続けていた男、宇沢弘文。
経済学が専門ではない人にとっても、物語としておもしろい。

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