20日からの3連休、まるで空気が変わってしまったような気がする。とても不安だ。K1のイベント、大阪の小さな密閉空間でのライブコンサート。リスクがありすぎるような気がする。
空気を変えてしまったのは、安倍首相の3月20日の会見だ。正しいことを言ってはいたのだが、総花的で、国民の心に届くようなメッセージではなかったように思う。リスクコミュニケーションになっていなかったのだ。
リスクコミュニケーションの最大の目標は、合意形成だ。ドイツ首相の国民への呼びかけは、とても胸に落ちる、哲学的なメッセージだったと思う。
日本の首相のメッセージの最後が弱い。
「今後は、主催者がこれを踏まえた判断を行う場合には、感染対策のあり方の例も参考にしてください。引き続き、感染拡大の防止に十分留意してください。
社会・経済への影響を最小限としつつも、国民の皆様の命と健康を守ることを第一に、 感染拡大の防止に向けた取組を更に徹底してまいりますので、御協力をよろしくお願いします。」
これだけで終わってしまった。主催者が対策を講じれば、大きなイベントもやっていいようにも聞こえてしまう。もう一回、国民に呼びかけてもいいのではないか。
日本のPCRの検査数がもう少しだけでも増えたり、疫学的な調査が行われていたら、もう少し科学的なことが言えたと思うが、今の状況下では、専門家も政治家も、誰も科学的なことが言えない。これは致し方ないことだと思う。だから誰が考えても難しいのだが、イタリアやスペイン、アメリカのような感染爆発を起こさないために、それぞれがどうしたらいいのかを考えてみた。
①リスクコミュニケーションのためには、首相の会見の最後にもう一回、
「感染経路が不明な患者が散見されていることも考えると、まだまだ安心できる状況ではない。中国の武漢や欧米のように、感染爆発を起こさないために、さらに2週間、できる限り自粛するよう協力してほしい」
という強いメッセージを発してほしかった。
②大変困難な状態が続いている。このようなときには、与党も野党もないはず。
喧々諤々、厳しい議論をしながら、〇か×かで戦いあうのではなく、日本にとって一番良い、〇に近い△を探すことを、ぜひ考えてほしい。
③感染症指定病院だけではなく、すでに多くの一般病院で、新型コロナウィルスを疑われる発熱患者を外来で診察したり、場合によっては入院させる準備が始まっている。
この7~8年、国の医療費の抑制が続いているので、医療の世界は大変厳しい状況に追い込まれている。医師や看護師の人材も十分ではない病院が多い。複雑な感染症を診るための十分な整備がされていない病院もある。その中で、医療スタッフは懸命に働いていることを忘れないでほしい。
政府は、巨大なお金を景気のためにばらまくことだけを考えず、厳しい状況の中で新型コロナウィルスと闘う、医療・介護の世界にリスペクトし、金銭的な支援や温かな目を向けてほしい。
④住民と専門家がうまく繋がるといい。
イベントをしたい、コンサートをしたいと考えている人達、あるいはそれを職業としている人達が、生活困難に陥っているとぼくのところにも相談が来ている。
医師と繋がれるようなネットワークがあるといい。安全な開催にむけて、アドバイスを出せる専門家との連携も大事だと思う。新型コロナウィルスと闘うためには、政治や医療が大事だが、音楽や芸術の力も、大切なはず。いかにリスクを減らしながら、国民の心を冷やさないで、温かく前へ向かわせることができるか、皆で考える必要があると思う。
⑤この国に住む一人ひとりが、1%でもいいから、この国のために行動してみるのはどうだろうか。
若者の理解が大事だ。若者が、専門家会議のメンバーに直接質問したり、議論をする場を設けてはどうだろう。それをSNSで流す。見えないウィルスとの闘いには、人間と人間の関係も良い方向へ変えていく必要がある。
感染爆発するかもしれない今、できるだけ一人ひとりが暴走せず、穏やかに、新型コロナウィルスに負けない、したたかさや、たくましさを持ち、子どもから若者そして高齢者、すべての世代が理解し合い、協力し合い、持久戦に持ち込み、すべての国民が喜べるような終息宣言を迎えるために、それぞれの立場でそれぞれの人が、新型コロナウィルスから逃げずにやれることを丁寧にやっていきたいと思う。
ぼくら国民自身が、この2か月間のことを学びながら、少しずつでもリテラシーを高めていく必要がある。海外旅行からの帰国者の感染が続いているが、リスクは予想できたと思う。ただ断じて行っていけないのは、誰かを批判してはいけない。これからどうすべきかを考えるべきだ。
旅行代理店もつらい状況だろうが、その旅にどのようなリスクがあるか、客にきちんと伝え、それぞれが自己決定できるようにしたほうがいい。
K1やコンサートについても、苦渋の決断だったと思うが、やっぱりまずかったと思う。このような判断をせまられたときに、これからは医師会や地域の病院や、感染症の専門家と繋がれることが必要だ。
それぞれが協働しながら、できる範囲で経済活動を続け、生き延びなくてはならない。国民の健康や命を守りつつ、心の元気を失わせず、働く人たちの生活が確保される、そんな日本にしていく必要があるように思う。
感染爆発をおこさないために、政治も、医療も、国民も、土俵際でねばり腰が必要だ。