感染者ゼロの謎
岩手県では今も新型コロナの感染者が出ていません。
PCR検査は559件、すべて陰性でした。
なぜ、岩手県は感染者が出ないのか、その理由をどう考えるか、何人かに訪ねてみました。
人口密度が低いという人がいます。
たしかにそうですが、青森や秋田、山形も同程度です。
新幹線が通っており、他県との往来もあることも、他の地域と条件は変わらないように思えます。
宮古市のあるドクターは、理由は全然わからないと言った後、
笑いながら「口が堅い」。
2人で大笑いしてしまいました。
震災後、ぼくは何度も陸前高田に通っていますが、たしかに岩手県の人は物静かな印象がある。
特に中高年の男性は、必要のないかぎりずっと黙っている人がいるような気がします(笑)。
もちろん、半分、冗談ですが、
近い距離でのおしゃべりが、感染リスクを高めることはあながち間違いではなさそうです。
インフルエンザでは、鼻腔にあるウイルスが咳やくしゃみによって飛び散るという意識がありますが、
新型コロナは似ているけれど、少し違うような感じがします。
新型コロナでは唾液にウイルスが多く、鼻腔よりもウイルスが5倍多いという論文も出ています。
ライブハウスで観客も一緒に歌う、叫ぶ、剣道や柔道などのスポーツで気合を入れて大声を出す、クラブで近距離でしゃべる・・・といった状況で感染リスクが高いのは、口腔内の唾液が飛び散っているためと推測できます。
こうした新型コロナの特徴がもっと明らかになれば、PCR検査の方法も、現在の鼻腔の奥から採取する方法から、今後は口腔内の唾液で行う検査になっていくかもしれません。
少しずつ自粛を緩めて、暮らしや経済を回復していくときにも、重要な情報になります。
たとえば、食堂などで食べるとき。
注意すべきことは、人としゃべらないようにすること。
食べる前と後に手洗いをし、帰宅してからもう一回手洗いすることは大切ですが、食べること自体は問題ないのではないでしょうか。
岩手県では、無症状の感染者などを見過ごしている可能性はありますが、PCR検査の結果では陽性者ゼロを保っています。
まじめな県民性があり、うつってはいけない、うつしちゃいけないという意識が高いことも、要因の一つかもしれません。
陸前高田のドクターは朝礼で、感染者がゼロもしくは少ないということは、抗体をもっている人も少ないということなので、
より気を付けようという話をしているそうです。
こういう意識が、県全体に広がっていることも、陽性者ゼロの要因になっているかもしれません。
ただ、一例目になることのプレッシャーはあるようです。
先日、岩手県知事がこんなメッセージを発信しました。
「陽性は悪ではない。
感染者は出ていいので、コロナかもと思ったら相談してほしい。
第一号になっても県はその人を責めません」
とても大事なことだと思います。
「スティグマ」といい、いま陽性者にレッテルを貼ってバッシングする風潮があります。
陽性者が非難されるような状況がつくられると、陽性者は隠れるようになり、それがかえって感染を拡大させる原因となってしまいます。
これでは、コロナの思うつぼです。
「陽性は悪ではない」という言葉は、岩手県だけではなく全国で、もう一度かみしめたい言葉だと思います。
陽性者ゼロの岩手県から、学ぶことは多いと思いました。
| 固定リンク