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2020年8月17日 (月)

許せぬ嘱託殺人

51歳のALS(筋萎縮性側索硬化症)の女性に薬を投与して死亡させた医師2人が、嘱託殺人の罪で起訴されました。
安楽死の議論が進んでいないことが問題という人もいますが、今回の事件は安楽死とは全く違います。
日本では積極的安楽死は認められていません。
横浜地裁が出した安楽死の4要件は、①耐え難い肉体的苦痛がある、②死が避けられず死期が迫っている、③肉体的苦痛を取り除く方法がない、
④命の短縮を承諾する患者の意思表示がある、とされていますが、今回の事件で合致するのは④のみ。

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これまでも医師が殺人の罪に問われる事件は何度かありましたが、
主治医が長い付き合いのなかで、患者に懇願され、やむに已まれず行なった例がほとんどです。
このALSの女性には、主治医を中心にケアマネジャーなど約30人の他職種チームが24時間体制でケアをしていました。
逮捕された医師は、忍び込むようにしてマンションを訪ね、たった10分間で薬を投与して、その場を立ち去ったとされています。
人の心は変わることが多いもの。
安楽死が認められているオランダでも、時間をかけて、何度も意思を確認しています。

今回の事件は、嘱託殺人として厳しく罰する必要があると思います。
この事件を受けて、安楽死を議論すべき、とはなりませんが、
いずれ、もっと落ち着いた状況のなかで、安楽死について時間をかけて議論をするときが来るでしょう。
今は、重い障害を負った人、難病の人の「生きる権利」に光を当てたほうがいいと思います。

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