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2020年9月23日 (水)

コロナと白い病気

カレル・チャペックが1937年に「白い病気」という戯曲を発表しています。
彼が亡くなる1年前です。
第二次世界大戦が始まる直前、大理石のような白い斑点ができ死に至る「白い病気」がヨーロッパ中に広がります。
作家はチェコスロバキアの作家ですが、戯曲の舞台は想像上の国です。
しかし、黒死病といわれたペストを意識しているのは言うまでもないでしょう。


戦争に勝ちたい元帥が白い病気にかかってしまいます。
ある若い医師が白い病気を治す薬を発見しますが、この医師は戦争をやめて平和条約を結ばない限り、元帥に治療薬を渡さないと言います。
元帥は戦争に勝つために、国民に平和の大切さや命の大切さを教えなかったのです。
「戦争万歳」「元帥万歳」と叫ぶ大衆の中で、医師は薬を元帥に届けようとするところで殺されてしまいます。
人間とはこんなものか、国をリードする幹部も、そして大衆も、ある方向に流されていく。
世界はどうなっていくのか、人間はどうなっていくのか、
80年ほど前にカレル・チャペックが書いた戯曲が、時限爆弾のように今の世の中に響いています。
結局、国民は矛盾の解決のために、ポピュリズム的手法や全体主義的な手法を選択してしまうのです。
トランプが出現したのもそう。
そして、中国共産党が世界の批判の中でむしろパワーアップしてしまう。
それは、国民が望んでるから、とまるでチャペックが80年前に予想したような展開がされています。
刺激的な本です。

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「白い病気 マクロプロスの秘密」
(カレル・チャベック著、栗栖茜訳、海山社)

不思議な本を読みました。

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