鎌田實の一日一冊(389)
「僕らは風に吹かれて」(河邉徹著、ステキブックス)
著者はバンドWEAVERのドラマーとして2009年にメジャーデビュー。
バンドでは作詞を担当しており、いくつかの小説も発表している。
主人公は、メジャーデビュー間近かベーシスト。
インスタグラムでは5万人のフォロワーがいる。
大きなツアーが企画されているさなかにコロナが始まり、とんでもない壁が立ちはだかる。
おそらくこの1年、多くの若者や音楽家たちがこの壁にぶつかっていたのだと思う。
小説の中で何度も、ボブディランの「風に吹かれて」が流れる。
久しぶりにボブディランを聴いてみたくなった。
WEAVERの曲も聞きながら、この小説を楽しく読んだ。
洒落た言葉に出会った。
「2020年、ボブ・ディランが新しい CD を出した。そんなに悪くない年だったんじゃないか。
完璧な年なんかない」
いいなと思った。
そう、どんな年も完璧な年なんかないのだ。
もう一つの言葉は
「元の世界なんてもう存在しない。コロナ前の世界に戻ろうなんてを思わないこと」
これもいいなと思った。
コロナの前から、僕たちの世界はどうしても戻らなければいけないほど素敵ではなかったはず。
音楽好きの若者がうれしくなるような本だ。
ぼくのような年代でも、全編にボブ・ディランが流れているような感じがして、いい時間をもらった。
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