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2021年5月10日 (月)

鎌田實の一日一冊(395)

「1973年のピンボール」(村上春樹著、講談社文庫)

久しぶりに読み直した「風の歌を聴け」が面白かった。
そこで、「1973年のピンボール」と「羊をめぐる冒険」の鼠三部作を読み直そうと思った。

「1973年のピンボール」も面白かった。
「見知らぬ土地の話を聞くのが病的に好きだった」という文章で始まる。
大都会の虚無で物語が展開されながら、どこかに地方への憧れのようなもの感じさせる。
ピンボール一つでこんな物語がかけてしまう村上春樹はやっぱりすごい。
オタクといってもいいし、フェチって言ってもいい。
こだわりが随所に見受けられる。
その中で失くしたものや、憧れ、悔恨、悲しみが描かれていく。
「風の歌を聴け」よりも物語性が増してきている。

1973


優れた作品は、30年先や40年先を予感しているようにも思える。
難しいことを考えずに、小説にどっぷり浸ることができた、心地よい時間だった。

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