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2021年9月 4日 (土)

鎌田實の一日一冊(406)

『いのちの停車場』(南杏子著、幻冬舎)

吉永小百合さんと月刊誌で対談するために、先に映画を観たが、原作の小説も読んでみると、映画とは少し違っていて、小説は小説の魅力にあふれている。

救急救命医の62歳の女性医師は、事情があって、ふるさとの金沢で在宅医療を始める。
在宅医としては初心者の主人公は、戸惑いながら在宅医療の面白さに気が付いていく。
そして、老々介護やゴミ屋敷に暮らす女性たちの命に寄り添っていく。

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最後は、神経内科医である自分の父親の話。
ここが映画とは全く違うところだ。
父親は、転倒して大腿骨の頸部骨折をする。
せん妄も起こしてしまう。
さらに脳卒中を起こし、左半身麻痺のうえに脳卒中後神経性疼痛に苦しむ。
脳の視床部が障害されると、つらい神経疼痛が起こる。
父親は安楽死を望むのだが、娘であり医師の主人公はとうてい「積極的安楽死」に同意できない。
父親も、娘に殺人ほう助の罪を犯させるわけにはいかない。
そして、予想外の事が起こる。
ストーリーは、作品を読んでもらいたい。
安楽死問題をどう考えるか、鋭く問いかけてくる作品である。

         ◇

9/4の朝日新聞で、鎌田實の『いのちの停車場』の書評が掲載されています。
ぜひ、お読みください。

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