鎌田實の一日一冊(408)
「生まれてこないほうが良かったのか? 生命の哲学へ!」(森岡正博著、筑摩書房)
「生まれてこないほうがよかった」とする「反出生主義」。
著者自身も反出生主義にとらわれながらも、
誕生否定の哲学を、誕生肯定へ、反・反出生主義へと展開していく。
快楽を最大化するより苦痛を最小化する「消極的功利主義」から、「幸福増大型」の思想へ向かうと、少数の不幸な人を放置してしまう。
それを修正するために、再び社会の苦しみの最小化を目標とする。
社会の苦しみの最小化を目標とするのは人道主義的で、しかも生きるのが大変な人たちに対しては緊急性がある。
多くの人の理解が得られそうだが、
この本読んで感じたのは、幸福増大型の思想と社会の苦しみの最小化の両方のバランスをとることが大事なのかと思った。
著者の「生きる意味」の哲学が展開されていく。
すでにインド哲学やギリシャ哲学の中に、反出生主義の思想はあった。
その反出生主義から、どう抜け出して行ったらいいのかを哲学的に思考しているのがとても魅力的。
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