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2022年4月24日 (日)

鎌田實の一日一冊(416)

「社会保障論1 基礎編」(香取照幸著、東洋経済新報社)

著者は、内閣参事官や政策統括官、年金局長など、各種の社会保障で中心的な仕事をしてきた。
介護保険を作るときにも中心的な役割を担っている。
東日本大震災の時に、ぼくは国の支援が必要だと思ったことを、香取さんらに連絡して、支援を出していただいたこともある。

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この本はとてもわかりやすい。
社会保障レジーム論というところは特に、頭の整理ができる。
社会保障は経済のサブシステムであり、社会のサブシステムである。
アメリカを代表とする自由主義レジーム、福祉国家の北欧を代表とする社会民主主義レジ―ム、ドイツなどを中心にした保守主義レジーム。
日本はその三つのレジームの隙間を縫うようにして、まあまあの結果を出している。
OECD 加盟国の社会支出で見ると、日本は平均より少しよいぐらいで、決して高い社会保障費を出しているわけではないが、
国民皆保険制度という優れた制度、しかも低廉なコストでフリーアクセスという、この制度は他の国でなかなか実現できないでいる。
WHO は日本の医療制度は世界ランキング第1位としている。
ちなみに、教育は5位、経済活力は10位、政治環境は25位。
2011年の医学誌「ランセット」では、「国民皆保険達成から50年、日本が保険給付の公平性を保ちながら医療費を抑制していることは驚異的」として、日本の医療制度の成功に高い評価を与えている。
さらに介護保険制度も大きな評価を得ている。
IMF( 国際通貨基金)も2019年、日本の年金制度は過去20年に渡りデータを開示し改革されてきた。
年金額はマクロ経済指標に連動する仕組みとし、制度の持続可能性を高めた上で世代間分配構造にもメスを入れていると高く評価している。

ぼくたちが見ると年金制度は綱渡りのように見えるが、世界から見ると、綱渡りをして落ちないところが日本の素晴らしさだと評価しているようである。

 

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