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2022年4月 5日 (火)

鎌田實の一日一冊(414)

『人口戦略法案 人口減少を止める方策はあるのか』(山崎史郎著、日経BP)

小説であるが、全て現実の細かなデータが使われている。
コロナ禍で出生数の急減が進んでいる。
我々は手をこまねき「小国」になっていくのか。
この国をどうしたらいいのか。
小説スタイルの新しい解説書。

おもしろい。

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2010年、南シナ海問題で中国はアジアの外相たちに向かって、こう言ってのけた。
「我々の国には基本的に大きな違いがある。中国は大国であり、あなたがたは小国だ。それは厳然たる事実だ」
強者はしたいことをする。弱者はしなければならないことを強いられる。
まさにロシアとウクライナの関係もそうだ。

ここで言う「大国」とは人口が多いということ。
日本が、経済成長を伸ばしてきたのは1億3000万人の人口があったからだった。
しかし、少子化が進み、日本の人口は7000万人ほどになるのではないかと言われている。
政府は、必死に1億人をキープする戦略を持っているようだが、人口減少を止める方策はあるのか。

作者の山崎史郎さんは、厚生省の元官僚。
介護保険を作るにあたり大事な役を果たした何人かのうちの一人である。
小説のなかでは、人口戦略法案として「子ども保険構想」を展開する。
介護を社会化しようという介護保険の向こうを張って、
子どもを社会が育てるという法案である。
本物のデータを使いながら、おもしろい小説になっている。
日本が「小国」にならないためにどうしたらいいか。
ぜひ読んでみてください。

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