鎌田實の一日一冊(419)
『民衆史の狼火を 追悼 色川大吉』(三木健編、不二出版)
八ヶ岳南麓に住み、昨年、96歳で亡くなった歴史家・色川大吉さんの追悼本である。
上野千鶴子さんからこの本をいただいた。
巻末の上野さんの特別寄稿からは、「色川さんありがとう」という思いが伝わってくる。
上野さんは、色川さんについて「私の中から最もよきものを引き出してくださった」と書いている。
そして、こんに文章も。
「好きな男性はと聞かれ、私はすかさず色川大吉さんと答えてしまった。
色川さんは小柄で風采の上がらない初老の歴史学者。
見てくれはおしゃれでもなければ、かっこよくない。
この人は笑顔がすばらしい。
相手の心の中を見透かすような悲しい目をして、くしゃくしゃと微笑み崩れる。
色川さんは人間として本当に上等な人でした。少年らしい誠実、正直さを持ち合わせていました」
色川さんは本当にピュアで少年のような人だった。
一時期、車で50分ほどかけて諏訪中央病院の外来に通っていた。
世界をどう見るか、色川さんの話はとても面白かった。
外来では、山登りやスキーの話もしていた。
自宅のすぐそばにスキー場があるので、子どものようにスキーをしているという話を聞いた。
結局、一緒にスキーをすることはなかった。
大腿骨頚部骨折をし、3年半にわたって車椅子生活を続けた。
上野千鶴子さんが隣の山荘に住んでおり、色川さんを支えたようだ。
素敵だな思った。
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