鎌田實の一日一冊(430)
『海辺の俳人』(堀本裕樹著、幻冬舎)
ぬくぬく、ひらひら、さくさく。
俳句結社「蒼海」主宰、俳人のエッセイ。
海が見える町に住みたいと思い探していたら、湘南の片隅に一軒家が見つかる。
一人暮らしを始めるが、やがてパートナーができ、結婚。
女の子が生まれる。
俳人はこんな句をつくる。
「七草や疫病の世に児のおなら」
生牡蠣のこんな食べ方も。
「しんしんと牡蠣にボウモアたらすべし」
牡蠣にアイラ島のシングルモルトウイスキー「ボウモア12年」を垂らして食べる。
こんな食べ方があるのかと思った。
ぼくも生牡蠣が好きだが、レモンか、三つ食べるときはケチャップで。
ニューヨークでも、アイスランドでも、モロッコでも食べたが、
牡蠣はその土地の海の味がする。
この本の「あとがき」を書いているときに、
立ち退きを求められる電話がかかってくる。
結局、『海辺の俳人』が世に出るころには、海辺の俳人ではなくなっている。
そんなしゃれたオチのある本である。
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