鎌田實の一日一冊(441)
『芸人たちの芸能史』(永六輔著、中央公論新社)
35歳の永六輔が書いた芸能論が、55年ぶりに復刊された。
芸能、芸道、芸人を愛していた永さん渾身の本は、読みこだえがある。
「農耕技術が発達するにつれてその宗教性は失われていき、
かつて神に奉納した芸能は庶民に演出して見せることで放浪芸が生まれていく。しかも差別の歴史のなかで」
「戦時中、淡谷のり子はブルースを禁じられたが、慰問に行くと兵隊はブルースを歌ってくれという。
その兵隊の気持ちを察して、舞台のすみにいた憲兵が姿を消し、彼女はブルースを歌った。あとで、その憲兵が舞台裏で同じようにブルースを聞き涙ぐんでいたという。このエピソード一つでも、芸能とわれわれの人間的なかかわり合いというものがわかるはずだが、軍部はそれがわからなかったのだからおそろしい」
やっぱり、永さんはすごい。
エンタメの源流がこの一冊でよくわかる。
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