2010年4月29日 (木)

鎌田劇場へようこそ!(31)「17歳の肖像」

ゴールデンウィークおすすめの映画は、「17歳の肖像」。
1961年のロンドンを舞台。魅力的な16歳の女の子が人生に迷い傷つきながら、少しずつ大人なっていく。

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辛口女性ジャーナリストの自伝を映画化している。
切ない。甘酸っぱい。健気で可憐。人生を踏み外しそうになる。オックスフォード大学の受験を目指していた16歳が、高校を退学する。すべて失いかかったところから、もう一度強く生きていくヒロイン。心があたたかくなる。

演技派新人キャリー・マリガンがみずみずしくすてき。
1960年代の音楽がいい。ジュリエット・グレコのシャンソンや時代の空気を持ったポップスなどがふんだんに使われている。2

町を走っている車がなんともノスタルジックで、一つのいい時代だったなあと思わせてくれる。

若い人が見ても、中年の人がみても、老齢期にさしかかった人がみても、青春というものの大切さがみえてくる感動的な映画である。
質の高い映画である。
大々オススメである。


2010年4月20日 (火)

鎌田劇場へようこそ!(30)「海の沈黙」

ヌーベルバーグの魁となるような映画をみた。
「海の沈黙」
ジャン=ピエール・メルヴィル監督。

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1941年、ドイツに占領されたフランス。
おじとめいが静かに生活する家に、ドイツ人将校がやってくる。
ドイツ人将校はめいに好意をもち、毎晩、熱心に話しかけるが、2人は一切しゃべろうとしない。
レジスタンスをしているのである。
会話は一切交わされないが、徐々に3人の関係が複雑に変わりはじめていく。
芸術を愛すドイツ人将校は、ほかの将校と違い、フランスを徹底的にたたきのめそうとしない。
ドイツとフランスが、文化の「結婚」をできればいいと思っている。
ほかの将校たちがフランスを徹底的につぶそうとするとき、この将校はやりきれない気持ちになっていく。
フランスの文学や音楽が好きなのである。

彼は、前線に立つ決意をする。
最後の晩、めいに、さらならを言う。3はじめて、めいが言葉を発する。
「さよなら」
めいの心は明らかに動いているが、レジスタンスは続いている。
3人の心理劇である。
それぞれの心理が、見事に表現されている。
いい映画である。
デジタルリマスター版である。
岩波ホールで上映していたが、今後、各地の映画館でも上映の予定があるようだ。
チャンスがあったら、ぜひ、みてほしい。


2010年4月 9日 (金)

茅野市映画館の日

蓼科には小津安二郎の別荘があり、ここで多くの名作の構想が練られたようだ。
それにちなみ、茅野市は、小津安二郎記念蓼科高原映画祭を開催するなど、映画文化の広がりに力を入れている。
映画館の復興を考え、2009年度は毎月一回、鑑賞無料の映画会を行ってきた。
好評だったため、2010年も引き続き行われるようになった。

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その第一弾が、4月18日の映画館の日。
茅野市の駅のすぐ近くにある新星劇場で、10時と13時の2回、鑑賞が無料となる。

上演されるのは、西川美和監督の「ディア・ドクター」。
この映画については、以前、このブログでも書いた(こちら)が、笑福亭鶴瓶が、にせ医者を好演している。
ちょっとぐっとくる、すばらしい映画だ。
見て、絶対に損はない。

今、映画館は厳しい。つぶれそうなところも多い。
ぼくは映画が大好きなので、映画館に元気になってもらいたい。


2010年4月 2日 (金)

ニュースエブリィに出演した

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1日、日本テレビ系のニュース番組News every.に出演した。
コメンテーターとして、ニュースをやさしくわかりやすく伝えたいと思っている。
週一回出演。次回は9日金曜になる。
主に木曜だが、先約の仕事があるときには、そちらを優先するので、違う曜日になることもある。

ジャニーズのNEWS小山慶一郎くんと、いいコンビができつつある。
小山くんはとても勘のいい子で、礼儀が正しい。
若い女の子たちに人気であるが、この番組を通して、さらに幅広い年代層の女性の心をつかむのではないかと思う。

次回9日もぜひ、ご覧ください。


2010年3月14日 (日)

ドラマ「がんばらない2」再放送

ぼくの『がんばらない』と『あきらめない』を原作にし、西田敏行さんが主演をつとめるドラマ「がんばらない2」が、4月14日、CSTBSで再放送される。
放送時間は、21時~23時。
感動的なドラマです。
視聴できる方は、ぜひ、ご覧ください。


2010年2月27日 (土)

今夜、ラジオ深夜便

本日27日の午後11時10分から、NHKラジオ第二の「ラジオ深夜便」に出演します。
人生“私”流のコーナーで、テーマは「共に闘うための大切なことば」。
生放送なので、どんな話になるのか、ぼくも楽しみです。
ぜひ、お聴きください。


2010年2月22日 (月)

ナイス素適音楽館 鎌田出演編(4)

「ナイス素適音楽館 鎌田出演編(4) 
八ヶ岳のアトリエで美しい音楽を作り続けているネイチャー・コンポーザー神山純一さんの番組に出演。 シリーズ最終回。

※最新刊などの情報は放送日当時のものです。
(4回にわけて公開します)
撮影:2006年11月。
制作:YOUテレビ。


2010年2月 8日 (月)

2/11はラジオの前で

2月11日、「鎌田實 いのちの対話」を放送する。
公開生放送。
今回は、広島県尾道市からお送りする。

ケストは、冒険家の堀江謙一さん、登山家の田部井淳子さん、シンガーソングライターのリピート山中さん。
司会は、おなじみの村上信夫さんである。

NHKラジオ第一、午前9.05~11.50。
ぜひ、お聴きください。


2009年12月28日 (月)

1/2「にっぽん巡礼」に出演

お正月特番の「にっぽん巡礼~2010年 こころの旅がはじまる」に出演が決まった。
「にっぽん巡礼」は今年のお正月に続き、2度目の出演となる。
前回は1時間番組だったが、今回は好評につき2時間。2img_0198
1月2日(土)BShi夜8~10時(再放送は、7日BShi昼1~3時)の放送をぜひ、ご覧ください。

今回の目玉は、俳優の仲代達矢さんの心の風景である。
奥さんが演出し、仲代さんが主演する「マクベス」が酷評。
奥さんが身ごもるが、死産。
その失意の夫婦を救ったのが能登の風景だった。
その後、最愛の妻を亡くす。
死を意識したという仲代さんを再び救ったのも、能登の風景だった。

仲代さんは能登にこだわっている。
能登演劇堂で、無名塾が芝居をするようになる。
東京や大阪からたくさんの客が訪れるようになる。
今年の「マクベス」は特に好評で、チケットは売り切れ続出となった。

能登演劇堂は、舞台の背景が開くようになっていて、外とつながる。
4img_0216外の風景も芝居のなかに取り込まれる。
馬が登場したりする。
まるで唐十郎の紅テントみたいだ。
圧倒的な迫力で、見るものをひきつける。
来年秋の公演には、なんとか都合をつけて能登に芝居を見に行きたいと思っている。

明治神宮の森の「風景」もすごい。
150年先をデザインしながら、10万本の木を全国から集めて植えたという。
まず針葉樹が先に生え、そして広葉樹がとってかわる。雑木林になっていく。
葉っぱもすべて元に戻す。倒木もすべて循環させる。
この森には新しいものを入れず、何も取り出さない。すべての森の中で循環させている。

日本には、すばらしい風景がいっぱいあることがわかる。
自分の心の聖地をもっていると、生きやすくなると思う。3img_0214
生きる力を与えてくれる。
ぼくの心の聖地は、縄文の森。
三井の森へ入る手前に、尖石縄文考古館というのがある。
ここには日本最古の国宝、縄文のビーナスがある。
その裏手にすばらしい雑木林がある。
そこに立つと縄文人の声が聞こえてくるような気がする。
12月上旬から中旬にかけて動画を紹介しているが、それを撮影した森である。
ぜひ、この2週間ほどの動画を振り返ってみてほしい。

では、1月2日の「にっぽん巡礼」をお楽しみに!

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写真は、今シーズンの初滑り

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昨日、富士見高原のパノラマスキー場で、スキーの初滑りをしてきた。
八ケ岳が遠くそびえているなかでの滑り。
この3日ほど雪が続いたため、ゲレンデの状況はとてもよかった。
しかし、愕然とした。
足腰が弱っている。
夏、イラクに行ったころから、本を出す準備に追われ、足腰の鍛錬がちょっと少なかった。
深部筋の強化が必要なのを実感した。
パプアニューギニアとガザへ行く予定が急きょ取りやめになったので、正月はじっくりと体を鍛えることにする。


2009年12月21日 (月)

鎌田劇場へようこそ!(29)「カティンの森」

「カティンの森」
待望の映画である。

監督は、ポーランド人のアンジェイ・ワイダ。Photo
1950年代に「地下水道」「灰とダイヤモンド」など、すばらしい映画をつくった。
ナチスに対するレジスタンス運動に参加していた監督は、美しいカメラアングルで、戦争の悲しみや、そこに生きる若者の切なさを見事に描いてきた。

ポーランドは、ナチス・ドイツに蹂躙されただけでなく、その後、ソ連の衛星国として自由を奪われていた。
その自由のないはずの国で、見事に政治の枠を超えた人間に迫る映画をつくってきた。
彼のなかには、レジスタンス運動に参加した若者だったころの熱い血がずっと流れつづけ、ソ連に対する巧妙なレジスタンスを行ってきたのではないか。
そのワイダが、79歳になって渾身の力で描いたのが、ポーランドの悲劇カティンの森事件である。

2 ポーランド軍将校ら1万5000人が、忽然といなくなる。
後に、ソ連の国内のカティンの森で多くの将校たちの遺体が見つかる。
ソ連は、ナチスがやった」と情宣活動を展開。
ソ連の衛星国になっていたポーランドは、ソ連の言いなりになるしかなかった。
これが「カティンの森事件」である。
ポーランドはその後、何度もカティンの森事件の真相を究明する映画をつくろうとしたが、できなかった。
ワイダも、自分の人生が終わりかかった今、ようやく撮ることができた。

ワイダの父は、ポーランド軍の将校で、カティンの森事件で亡くなっている。
自分の家族の映画でもある。
家族の絆を描いている。
戦争のなかでも、引き裂くことのできない家族の絆はますます深まっていく。
人と人とのつながりによって、人は生きていくことことができる。
同時に、人と人とのつながりによって、人は疲れていく。
支え合いがあったり、憎悪があったり。

カメラが美しい。
「灰とダイヤモンド」では絶妙なカメラワークで、夜明けのダンスホールで靄のなかにわびしいダンスが繰り広げられるという、不条理な世界を映し出した。
そのワイダが再び、美しいまちクラコフを詩情高く映している。
タデウシューという青年が突然の死を迎えるが、「灰とダイヤモンド」のなかで、テロリストが洗濯物が干されたところで殺されていくシーンを髣髴させるような場面であった。

話が少しそれるが、ワイダと同時代の監督に、アニエス・ヴァルダがいた。
ゴダールなどヌーベルバーグの旗手といわれた人たちや、イギリスの「アングリー・ヤングマン」(怒れる若者たち)の監督たちに比べると、ヴァルダの映画にはあまり心を揺さぶられなかった。
きれいな映画を撮るなあというくらいである。
「5時から7時までのクレオ」は斬新だったが、「幸福」などは、なんとなくきれいな映画だな、ということで終わってしまったような感じがする。あまり記憶に残っていない。
しかし、「アニエスの浜辺」はなかなかおもしろい。
フランスでは、最近、アニエス・ヴァルダのことを知らない若者たちも映画をみにやってきて、25万人を動員する大ヒットになったという。
ちょっとしゃれたドキュメンタリー映画である。

「カティンの森」に話を戻そう。
反戦の映画である。

事件の真実を暴こうとしたアグニエシュカの言葉が重い。3
「私は5年間、ドイツと戦ってきた」
ソ連の衛星国になってもドイツと戦ってきたときのように、ソ連に不正義があればそれをただす、とたぶんアグニエシュカは言おうとしたのだろう。

「私は犠牲者のそばにいたい。殺人者のそばにいるよりは、犠牲者のそばにいたい」

どんな時代にも、空気に負けずに、言うべきことを言う人間がいる。
そんなアグニエシュカは、ソ連の陰の力に殺されていく。なんとも不条理な世界だ。

戦争は、人間のなかにいる獣を暴れやすくさせる。
カティンの森で1万5000人が殺されたのも、人間のなかにある業あるいは獣が暴れたためなのだろう。
こうした悲劇は、これからもありうることである。
人間のなかには獣がいるから。
だから、戦争はしないこと。
獣を暴れさせない世界をつくっていくことである。

正月映画は、アニメの「ワンピース」が圧倒的に勝つのかもしれないが、どう生きるべきかを考えさせてくれる映画「カティンの森」はどうだろう。
ちょっと暗くなるけど、いい選択だと思う。


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