2016年10月29日 (土)

地域包括ケアシステムとは何か64

医学生たちが地域を救うアイデアを出し合った「地域包括ケア甲子園」。
ユニークな発想の案が出た。
「ドクターG研修会」を地域の目玉にするというアイデアを出したグループも。
これは、NHKのドクターGに出るような先生に来てもらって、医学生らを集めてキャンプをする。
そして、本別町の魅力を知ってもらう。
これに近いアイデアは、ほかの班からも出た。
「オーロラ病院キャンプ」「満点星空病院キャンプ」など。
オーロラや星空をみながら、有名なドクターにきてもらってキャンプをやったらどうかというもの。定期的に年何回か開する。
メディカルフェスをやったらどうかという案も。
ホームシアターの機器で映画上映会をして、ディスカッションしたり、楽しい企画を考えていくことで町を活性化する。
また、本別で2年、医師として働くと、1年間アメリカの先端医療の病院や、国内を希望する場合は国内の病院で技術を磨き、
本別に戻ってきてもらう制度をつくる、というアイデアもあった。

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今回、地位包括ケア甲子園は急に開催したのだが、
呼びかけに応じてくれる学生たちのおかげで、ユニークな企画がたくさん出た。
第二回はさらに、後援企業なども募って、医学部の医師の卵だけでなく、看護や介護の学生にも参加してもらいたい。
若い人たちの力でこの日本を変えていく面白い核になってほしい。
この模様は、いずれ、日本テレビのニュースエブリや介護専門誌「おはよう21」で目に見える形で報告されると思う。
期待してください。

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2016年10月28日 (金)

地域包括ケアシステムとは何か63

「地域包括ケア甲子園」では、本別町側では高橋町長が審査員長、地域包括ケア研究所側では、鎌田が責任者となって理事らが審査した。
医学生たちからはユニークな案が出されたが、「トリプルアクセル」というプロジェクトを企画したグループが栄冠を得た。
こんな内容だ。
人口減少をブロックするための、3つのターンが必要だという。
一つは「×ターン」
エックスターンではなく、バツターンと読むそうだ。
本別は保育園の準備も万端。
シングルで子育てする人を、本別に戻ったり、移住したりするように支援する。
シングルで子どもを育てようとするとき、地域の応援もあり、仕事もあり、みんなから感謝もされる。
子どもの貧困と一人親というのは関連が深い場合がある。
保育所のある風俗店に子どもを預けて仕事をするという現実もある。
子どもを育てながら安定した職が得にくい現実もある。
そんな一人親も介護の勉強をしながら、子どもをのびのび育てることができる。
雇用の問題や子育ての問題、新しい生活など、この×ターンの発想を使えば、おもしろいことが起きてくるだろう。

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場合によっては空き家を利用したシングルマザーのシェアハウスもおもしろい。
子どもは病気になりやすいが、お母さんたちが協力し合ったら、安心のシステムができているくのではないか。
二つ目は「インターン」。
移住には、お試し期間も大事。
一か月でいいから、寝泊まりを確保して、医師や看護師にきてもらう。
すぐに移住を決められなくても、いつか移る人も出てくる。
三つ目が、「Uターン」。
高校生たちに医療や看護、介護の勉強に出てもらって、帰ってきてもらう。
どうすれば、住みたい町になるか、人口減少を食い止められるか。
おもしろい話がいっぱい出てきた。

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2016年10月27日 (木)

地域包括ケアシステムとは何か62

地域包括ケアシステムについて、若い人たちに考えてもらおうと、「地域包括ケア甲子園」を開催した。
都内の10の医学部の学生たち17人が参加した。
5つのブロックに分かれて、地域包括ケアの魅力的な案を考えた。
北海道の本別町の域包括ケアにかかわる職員や高橋町長がスカイプで参加。
町の状態を話してくれた。
本別町では10年以上前から認知症の人たちの見守り隊ができ、認知症の人を閉じ込めず、安心して地域へ出ていけるように、お互いに助け合いながら生きていける町づくりをしてきた。
2015年台風で大雨になったとき、要支援や要介護の人たちを、若い人たちや学生がいちはやく救助にかけつけて、安全なところへ誘導したという。
福祉マップをつくって取り組んでいる。

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人口7000人の十勝地区の町である。
国保病院には常勤医師が4人、医師も看護師も外来や入院患者、透析患者を守りながら、救急外来を維持するのがとても大変な状況にある。
どうしたら医師が移住することができるか。
地方が看護師や福祉従事者をどう確保するか。
将来、死に場所難民を回避するにはどんなシステムがあったらいいか。
まちに住む人がしあわせになるための医療、福祉とは何か。
こんな課題で、医学生たちによるアイデアを競う甲子園が繰り広げられた。

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2016年10月26日 (水)

地域包括ケアシステムとは何か61

介護専門誌の月刊「おはよう21」で、ぼくは連載対談をしている。
今月発売の12月号では、リハビリ専門医の長谷川幹先生の在宅訪問リハビリテーションに同行した。
長谷川先生は、リハビリの専門クリニックの院長をしながら、日本脳損傷者ケアリング・コミュニティー学会の理事長をしている。
高次脳機能障害というわかりにくいが深刻な障がいのある人たちと医療の専門家がいっしょに、学会をつくった。
日本にはあまりないスタイルの学会である。
障がいがテーマの場合は、当事者を入れることが大事だと考えている。
ぼくは、地域包括ケアには当事者の主体性が大事だと思ってこの30年、取り組んできたが、
長谷川先生も同じように考えてきたことがわかった。
長谷川先生も地域訪問リハビリをはじめて30年になるという。
同じような時期に、同じようなことを考えてきた。
日本のいろんなところに熱い志を持っている人たちがたくさんいるということだと思う。

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大企業で幹部を務めた人が脳卒中になり、失語症になる。
言葉の半分くらいしか通じない。
話しても相手に伝わらないから、話すことに自信を失っていた。
訪問で、ぼくはその男性と話をした。
妻の実家の京都までお墓参りに行ってきたこと。
お墓まで坂があり、よろよろして歩きにくかったが、それでも行ってきたという。
そのやりとりを聞いていた長谷川先生から、おほめの言葉をいただいた。
「鎌田先生がうまくひき出してくれた。
京都に行ってきたという達成感を自分の言葉で語るのはとても大切なのんだよ。
自分の状況を言語化するということは、リハビリにとっていちばん必要なことなんです」
興味のある方は、「おはよう21」をご覧ください。

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2016年10月17日 (月)

人生を肯定する力

緩和ケア病棟を回診した。
卵巣がんの50代の女性だ。
手術したが、縦郭のリンパ腺に転移し、胸膜炎も起きている。
ぼくが病室に入っていくと、えっと大きな声を出して起き上がろうして、
少しせき込んだ。
ぼくの本を読んでいるという。
まさか、ぼくが来るとは思わなかったようだ。
呼吸が苦しくなると、うつむいて上半身が前屈してしまいがちになるが、少しだけでも胸をひろげるようにすると、呼吸も大きくなるとアドバイスした。
にこにこしている。
笑顔のいい人は、ここからよくなることが多い、とぼくが言うと、
さらに、にこにこした。
常勤ではないが、長く教師を務めてきたという。
小学校1年の時、親に買ってもらった絵本を、ぼろぼろになった今も大切に持っている。
絵本には分校のような学校が出てくる。
「それが私の夢でした」という彼女は、小学校の先生になった。
結婚したのち、子宮内膜症になり、子どもはできないのかと思っていたら、
2人も子どもを授かった。
その子どももすでに成人した。
代用教員だったが、夢の教師になれて、とても満足しているという。
自分の人生を肯定的にとらえている。
語りながらときどき涙があふれてくるが、タオルでぬぐうとまたいい笑顔になった。
よその病院で治療をうけてきた。
つらいこともあったが、諏訪中央病院にきてほっとしているという。
すべてを納得しているという。
このところ人生の晩年に訪れる「遊行期」ついて考えている。
自分らしくきちんと生きるには、学生期や家住期、林住期のときから遊行の精神をもち、自分の生きたい生き方をしていくことが大切なのかなと思った。

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2016年10月14日 (金)

地域包括ケアシステムとは何か60

NHKスペシャルで、「健康格差」が取り上げられた。
コメンテーターとして出演した。
収入の差によって、健康に格差が生じているという内容だ。
低所得者のほうが高所得者に比べ、肥満や脳卒中、骨粗鬆症のリスクが約1.5倍高くなる。
精神疾患はなんと3.4倍。
非正規雇用のほうが正規雇用に比べて、糖尿病になる確率が1.5倍も高い。
低所得者にはうつが多い。
食事にも注意できなくなり、コンビニで炭水化物中心のものを食べ、
肥満や糖尿病を合併してしまうことが多い。
                 *
地域格差も大きな問題だ。
被災地の南相馬の調査では、被災後、糖尿病が60%増えている。
避難生活の大きなストレスと、緊急時の食料が炭水化物中心だったことが問題ではないかと思う。
支援のしかたも考えなければいけないということだ。
自殺は、秋田を中心に東北に多い。
短命県は、ずっと青森が一位になっている。
脳卒中が多いのは、岩手。
かつては長野は2位だったが、そこから脱した。
北海道は、がんの死亡率が高く、脳卒中も多い。
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長野県は決して県民所得が高いわけではない。
野菜摂取量日本一になったのは、生活習慣を変えるという行動変容を起こしたからだ。
地域包括ケアは、一人ひとりの住民の意識がかわることの集積として、マスとして意識が変わることが大事である。
病気の予防、介護予防がおこなわれていること。
そして、認知症になっても、孤立させず、進行させないようにすること。
そうすれば、医療や介護の費用も抑えることができる。
地域の経済と雇用、健康もふくめた人生の満足度はみんなつながっている。
地域包括ケアは、たんに医療と看護、介護のネットワークではない。
もっと大きな視点で、幸せの満足度やまちづくりを考えていくことが必要だと思う。

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2016年10月10日 (月)

地域包括ケアシステムとは何か59

なぜ、諏訪中央病院にロダンの彫刻があるのか。
「神の木を神の子がひく御柱」
という句を詠んだ原天明さんという有名な俳人が茅野市にいる。
NHKでも俳句の選者をしていた人だ。
その天明のお父さんを、ぼくは外来で長い間診ていた。
好奇心旺盛な人で70年前にロシアに行き、クロユリの種を持って帰り、自分の庭に咲かせたりした。
晩年の20年前くらい前から、この人は「遊行」を覚悟して生きる自由人だった。
脳卒中で倒れ、8日間ほど入院したが、
どうしても家がいいということで、息子の天明さんが本人のいうとおりに在宅医療に踏み切った。
諏訪中央病院の医師や看護師が往診するようになった。
91歳で天寿を全うした。
亡くなってしばらくしてから、天明さんからお礼の手紙が来た。
家での介護は、家族にとっては楽しい半年間だったという。
亡くなる一か月前に、紙をもってこさせ、里謡を口ずさんでそれを書かせたという。
「うちのそばには一年中お湯の出ているところあり」
実際は温泉が出ているところはないが、それほどあたたかいということらしい。
「日ごろ温泉好きだった父の満足感にあふれたうたであり、家族、親戚、友人、知人にあてた心からのメッセージでもあります」と天明さんは説明している。
ロダンの彫刻は、やはり茅野の有名な彫刻家矢崎虎夫さんから天明さんがうけついだもので、それを諏訪中央病院に寄贈してくれたのだ。
地域包括ケアは、人から人へ、人から地域へといろいろなものを「伝える」という働きのなかで、機能するシステムである。

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2016年10月 3日 (月)

地域包括ケアシステムとは何か58

健康づくり運動の大切な核となるものは、行動変容である。
わかりやすくいえば、住民をその気にさせることである。
諏訪中央病院ではリハビリに関連する医師や施療者が勉強会をしているが、患者さんのモチベーションをどうしたら維持できるか、どう行動変容をおこさせるか、議論したという。
ちょうど大きな脳梗塞で一時要介護5だった人が、在宅リハとボトックス療法で痙縮が改善した。
進歩がみられないと、モチベーションが下がりがちだが、これらの療法で効果がみられたことは、モチベーションの継続につながったようだ。
諏訪中央病院の研修医や看護師、リハビリスタッフは諏訪湖マラソンに出る人が多い。
特にリハビリの人は積極的だ。
ご主人と、おにぎりとポテトサラダをもって応援に行きたい、というのがかつて要介護5だった人の要望である。
彼女のいきがいといっていもいい。
そのために、痛いボトックスの注射にも耐えた。
前向きで、楽しそうだ。
彼女のなかで、行動変容が起きたようだ。

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2016年10月 2日 (日)

地域包括ケアシステムとは何か57

地域にはいろんな理由で生きづらい思いをしている。
その人たちが当たり前に暮らせるようにすることが地域包括ケアである。
かつて諏訪中央病院の老健の施設長だった宮坂先生は、現在、120人を往診する地域包括ケアの担い手である。
訪問看護や往診をしながら、一人ひとりが生きてけるように考えている。
その宮坂先生がしばらく理事長を務めていたこのまち福祉会が、
諏訪市の障害児の通園施設である清水学園を民営化した。
下諏訪から諏訪市、茅野市、原村、富士見一帯に障害のある子どもからお年よりまでのために、13の事業所をつくった。
就労支援や生活介護など、精神障害、知的障害、身体障害がある人たちが利用する就労支援や生活介護の施設である。
古い民家を買ったり借りたりしながら、地域のなかにとけこめるように工夫している。
地域にとけこむ、これがとても大事だと思う。
このまちキッズ学園の児童発達支援センターやその近くの障害者のグループホームでは、
諏訪市の地域の共同浴場を利用している。
諏訪市では温泉を住民に配湯されているが、それを利用して、障害者と一般の人がふれあい理解を深めていく。
そういうことが大事なのだろう。
地域包括ケアは高齢者だけでなく、いろんな人が生きやすくなるシステムである。
「福祉文化をつくることが大切」と宮坂先生は言うが、まさに地域包括ケアは新しい文化をつくることだと思う。

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2016年10月 1日 (土)

地域包括ケアシステムとは何か56

リハビリの懇話会で講演したら、車いすのHさんが奥さんとやってきた。
進行性の難病であるHさん。
ぼくは以前、同じ病気である彼のおばあちゃんを診ていた。
その彼が、こうやって積極的に、奥さんと車いすで出歩いている。
ぼくに、自作の俳句集の4集を手渡してくれた。
「神の木と 人人人と御柱祭」
御柱は神の木といわれている。
今年の御柱祭も、多くの人が渦となって御柱のもとに集まった。
「十三夜 湯船にゆらぐ山の宿」
山の宿へ行き、奥さんと温泉に入ったときの俳句ならば、素敵な話だ。
進行性難病の人でも、リハビリしながら機能を維持していくことができる。
そして、地域であたりまえに暮らすことができる。
地域包括ケアは、それを多方面から支えていくことである。

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